制震について

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住まいの地震対策は、耐震だけで充分…。そう思っている人にこそ、「+制震」の魅力をお伝えしたい。そのために、家づくりの前にチェックしておきたい地震の基礎知識をご紹介します。

01

3つの地震対策

住宅の地震対策は3種類あります。耐震、免震、そして制震です。ここでは、それぞれの構造におけるメリット・デメリットを解説します。耐震だけでは充分ではない理由もわかるはずです。

  • 制震
  • 耐震
  • 免震
  • 制震

    揺れを「吸収する」

    揺れを「吸収する」
    メリット
    性能劣化がほとんどなく、繰り返しの地震にも効果を発揮する
    デメリット
    耐震と組み合わせて使用するため耐震のみと比べると多少コストがかかる
  • 耐震

    揺れに「耐える」

    揺れに「耐える」
    メリット
    コストが一番かからない
    デメリット
    地震のダメージが残るため、繰り返しの地震に弱い
  • 免震

    揺れを「伝えない」

    揺れを「伝えない」
    メリット
    建物と地盤を切り離すため建物に直接揺れが伝わらない
    デメリット
    地盤やプランに制約が多く、かなりのコストがかかる

02

大地震の被害状況

2016年に発生した熊本地震を覚えていますか。震度7の揺れが2度、地震発生から3か月間で合計1,800回以上の揺れを観測しました。ここでは、熊本地震の2年後に住まいの利用状況を調査したデータをご紹介します。

熊本地震の2年後も住み続けられた家は半数以下⁉

熊本地震で倒壊した建物(木造)297棟のうち88.2%にあたる262棟が2回目の揺れで倒壊。修復できず、更地にして建て替えるしかない建物は27%でしたが、実際には約半数の54%が更地または建て替えを選択するという結果に。つまり、半数以上が継続で住み続けていないことが明らかになりました。
実は、耐震基準では建物が損傷しないことや繰り返しの地震に耐えることは想定されていません。倒壊していなくても損傷はします。データから読み取れるのは、同じ家に住み続けることに不安を抱いた人も建て替えを選んだ、という事実です。

  • 倒壊した建物
    (木造)
  • 被害状況
    (木造)
  • 2年後の建物
    状況(木造)
  • 倒壊した建物(木造)

    耐震基準のみだと
    繰り返しの地震に耐えられない

    倒壊した建物(木造) 倒壊した建物(木造)

    約90%の建物が2回目の揺れで倒壊。耐震基準を満たしているだけでは、繰り返しの揺れに耐えられないことが推測できます。

  • 被害状況(木造)

    修復できず、更地にして
    建て替えるしかない建物は
    27%だったが…

    被害状況(木造) 被害状況(木造)

    無補修または補修すれば使える建物は73%。約3/4は継続使用できる被害レベルでした。

    ※益城町中心部の被害状況(有効棟数:1,955棟)

  • 2年後の建物状況(木造)

    約半数の54%が更地か、建て替え。
    継続使用が可能な27%も含まれる

    2年後の建物状況(木造) 2年後の建物状況(木造)

    地震直後の調査では73%が継続使用できるとされましたが、実際には46%にとどまりました。小破以下に抑えないと継続使用が難しいことがわかりました。

    ※益城町中心部の震災2年後の建物状況
    (有効棟数:1,926棟)

※参考:国土交通省/ 国立研究開発法人建築研究所「熊本地震における建築被害の原因分析を行う委員会 報告書」
日本地震工学会論文集2019年19巻1号「2016 年熊本地震から2 年経過した益城町市街地の被災建物の現況調査」

03

大地震への対策

大地震の後でも同じ家に住み続けるためにはどうしたらいいのか。その対策の1つが、耐震構造に「+制震」を組み合わせる方法です。地震の揺れを吸収して繰り返しの揺れに強い家を実現します。

「+制震」なら大地震の後も補強いらず

耐震性能に制震装置を加えることで、地震の揺れを何度でも吸収し、住まいの損傷を抑えます。だからこそ、住み続けられる家になるのです。
ここでは、「+制震」の効果をグラフで可視化しました。耐震のみ(耐震等級1)と、耐震(耐震等級1と3)に制震装置を組み合わせた家の地震に対する強さを比較します。

  • 耐震のみ
    (耐震等級1)
  • 耐震(耐震等級1)
    +制震
  • 耐震(耐震等級3)
    +制震
  • 耐震のみ(耐震等級1)

    耐震のみ(耐震等級1)

    1回の大地震での
    倒壊は防げても…

    耐震のみ(耐震等級1)

    耐震等級1は、建築基準法の耐震基準と同程度の耐震性能で、1回の大地震での倒壊は防ぐものの、損傷しないことや繰り返しの地震に耐えることを想定したものではありません。そのため、大地震発生後に残る耐力(耐震性)は激減!繰り返し襲ってくる余震に耐えられないだけでなく、住み続けることが難しくなる可能性があります。

  • 耐震(耐震等級1)+制震

    耐震(耐震等級1)+制震

    劣化しないから、
    何度でも揺れを吸収!

    耐震(耐震等級1)+制震

    耐震等級1の建物に50%の制震をプラスすると、地震エネルギーを吸収して建物の変形(揺れ)が小さくなるため、建物を補強せずに使えるレベルに損傷を抑えることができます。制震は耐震と違い性能がほとんど劣化しないため、何度でも地震の揺れを吸収することができます。

  • 耐震(耐震等級3)+制震

    耐震(耐震等級3)+制震

    揺れに強く、繰り返しの地震も安心!

    耐震(耐震等級3)+制震

    耐震等級3(耐震等級1の1.5倍の壁量)にグレードアップすることで、大地震後の耐震性の劣化を抑制できます。耐震の「強固な力」と制震の「吸収する力」の相乗効果で、地震に強く地震後も住み続けられる家にすることができます。もちろん、繰り返しの地震にも安心です。

※グラフはイメージです。

VOICE

地震研究者が語る
「+制震」の効果

「+制震」「高耐震」で損傷被害を最小限にすることで、地震後も住み続けられる家に。
記事内容をチェック

中地震の時に建物の損傷を最小限にして、大地震の時に建物が倒壊して人命を損なわないようにしようというのが建築基準法の耐震性に関する基本的な考え方です。つまり、大地震に見舞われたときに損傷しないことや継続して住み続けられることをねらっているものではありません。ただ、この耐震性は、「設計」という行為によって向上させることができます。

例えば、強い壁をバランスよく基準よりも多く配置したり、繰り返しの地震に対して性能劣化の少ない制震壁を使ったりして大地震時に損傷を抑え、継続して住まうことが可能な住宅を設計することは現在の技術では可能です。想定外の自然災害も多く発生している昨今です。より高い耐震性を目指していただければ、災害の克服も可能と思います。

「+制震」「高耐震」で
損傷被害を最小限にすることで、
地震後も住み続けられる家に。
京都大学 生存圏研究所 五十田 博教授

京都大学 生存圏研究所

五十田 博教授

安全な地域ってあるの?

大地震の脅威は、他人ごとでは
なくなっている

今後30年以内の大地震の発生率が公表されています。相対的に確率が低い地域でも安心はできません。熊本地震は相対的に確率が低かった九州で発生しました。それだけ地震の予測は難しく、誰にとっても大きな脅威だと言えるでしょう。どこに住んでいても油断は禁物です。

※参考:地震調査研究推進本部「活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧(2023年1月1日での算定)」

地震調査研究推進本部「主な海溝型地震の評価結果(地震発生確率)」(算定基準日:2020年1月1日)