住まいの地震対策は、耐震だけで充分…。そう思っている人にこそ、「+制震」の魅力をお伝えしたい。そのために、家づくりの前にチェックしておきたい地震の基礎知識をご紹介します。
住宅の地震対策は3種類あります。耐震、免震、そして制震です。ここでは、それぞれの構造におけるメリット・デメリットを解説します。耐震だけでは充分ではない理由もわかるはずです。
2016年に発生した熊本地震を覚えていますか。震度7の揺れが2度、地震発生から3か月間で合計1,800回以上の揺れを観測しました。ここでは、熊本地震の2年後に住まいの利用状況を調査したデータをご紹介します。
熊本地震で倒壊した建物(木造)297棟のうち88.2%にあたる262棟が2回目の揺れで倒壊。修復できず、更地にして建て替えるしかない建物は27%でしたが、実際には約半数の54%が更地または建て替えを選択するという結果に。つまり、半数以上が継続で住み続けていないことが明らかになりました。
実は、耐震基準では建物が損傷しないことや繰り返しの地震に耐えることは想定されていません。倒壊していなくても損傷はします。データから読み取れるのは、同じ家に住み続けることに不安を抱いた人も建て替えを選んだ、という事実です。
※参考:国土交通省/ 国立研究開発法人建築研究所「熊本地震における建築被害の原因分析を行う委員会 報告書」
日本地震工学会論文集2019年19巻1号「2016 年熊本地震から2 年経過した益城町市街地の被災建物の現況調査」
大地震の後でも同じ家に住み続けるためにはどうしたらいいのか。その対策の1つが、耐震構造に「+制震」を組み合わせる方法です。地震の揺れを吸収して繰り返しの揺れに強い家を実現します。
耐震性能に制震装置を加えることで、地震の揺れを何度でも吸収し、住まいの損傷を抑えます。だからこそ、住み続けられる家になるのです。
ここでは、「+制震」の効果をグラフで可視化しました。耐震のみ(耐震等級1)と、耐震(耐震等級1と3)に制震装置を組み合わせた家の地震に対する強さを比較します。
※グラフはイメージです。
中地震の時に建物の損傷を最小限にして、大地震の時に建物が倒壊して人命を損なわないようにしようというのが建築基準法の耐震性に関する基本的な考え方です。つまり、大地震に見舞われたときに損傷しないことや継続して住み続けられることをねらっているものではありません。ただ、この耐震性は、「設計」という行為によって向上させることができます。
例えば、強い壁をバランスよく基準よりも多く配置したり、繰り返しの地震に対して性能劣化の少ない制震壁を使ったりして大地震時に損傷を抑え、継続して住まうことが可能な住宅を設計することは現在の技術では可能です。想定外の自然災害も多く発生している昨今です。より高い耐震性を目指していただければ、災害の克服も可能と思います。
京都大学 生存圏研究所
五十田 博教授
今後30年以内の大地震の発生率が公表されています。相対的に確率が低い地域でも安心はできません。熊本地震は相対的に確率が低かった九州で発生しました。それだけ地震の予測は難しく、誰にとっても大きな脅威だと言えるでしょう。どこに住んでいても油断は禁物です。
※参考:地震調査研究推進本部「活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧(2023年1月1日での算定)」
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